丁子 紅子個展『めぜめとまどろみ』に寄せて

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めぜめとまどろみ ― 展示開催に寄せて

 

2021年1月28日。

当時の勤め先だった hug coffee の常連のお客さんであるカジタ モリオさんに誘われ、池袋で開催されていた日本画家・丁子 紅子さんの展示を訪れた。

(時間をつぶすために訪れたカフェで撮ったモリオさんとの一枚、若い)


正直その誘いを受けた時、日本画に興味はなかったので、あまりのしつこさにしぶしぶ足を運んだというのが本音です。

けれどその日、展示会場で目にした作品に一瞬で心を奪われたのです。
それまで見たことのなかった色彩、生きた筆の呼吸、岩絵の具の立体感。
あの日の衝撃は今でも忘れられません。

(緊張してます)

それをきっかけに、日本画という文化、そして「知らなかった世界を知ることの喜び」に気づきました。

新しいものに触れるたび、少しずつ世界が広がり、景色が変わっていく感覚を覚えたのです。

その後、当時勤めていた hug coffee で紅子さんに作品をお願いし、オーダー作品の制作と個展の開催をともにしました。



(展示初日にはライブペイントと中村 月子さんのライブも開催しました。)

一緒に仕事をしていく中で、作家としての姿勢はもちろん、人としても深く尊敬するようになり、自分にとって大きな影響を与えてくれる存在になりました。

時が流れ、GOOD TIMING TEA をオープンする際にも、紅子さんにお店のオリジナルの絵を描いていただきました。

(茶の花を掛け軸に)

そして今回、念願かなってGOOD TIMING TEAでの個展を開催することになりました。
しかも、いまだに大ファンであるhug coffee との合同開催というかたちで。

コーヒーとお茶そして日本画、異なる文化が織りなすマリアージュを楽しんで頂けますと幸いです。

 


 

実は、2023年に自分と紅子さんを引き合わせてくれた カジタ モリオさん が亡くなりました。

ここにすべてを記すことは出来ないのですが、紅子さんの展示をきっかけに様々な芸術に興味をもつようになった自分は、それ以後、しぶしぶではなく、ノリノリでさまざまな展示に足を運ぶようになったのです。

モリオさんがいなければ、本展示もなかったでしょう。

生前、体のあちこちに病を抱えたモリオさんがよく口にしていた言葉があります

『人が本当に死ぬのは、人に忘れられたときだ。』

そんな名言を残しつつ、誰にも言わず、墓にも入らず、人知れず旅立ってしまったモリオさん。

これまでモリオさんの死について語ることはありませんでしたが

この個展「めぜめとまどろみ」の開催をもって、カジタ モリオ氏への畏敬の念を表したいと思います。